2016年5月16日月曜日

7 代理

大阪府豊中市の司法書士の伊東弘嗣です。

さて、今回は代理のお話です。

<代理>
・任意代理と法定代理(本人の委任に基づくか、法律に基づくか)
・効果…法律効果が本人に帰属する(99)
・要件…①代理権の存在②顕名(本人のためにすることを示して)③代理人と相手方との間の有効な法律行為(99)
・顕名のない行為の効果帰属(100)
・権限の定めのない代理人のなしうる行為…①保存行為②利用・改良行為(103)
・自己契約・双方代理の禁止(108)…例外①本人の許諾②債務の履行③債務の履行に順ずる行為(ex.登記申請の双方代理)
・自己契約・双方代理の効果…無権代理(大判大11・6・6)
・代理権の消滅(法定代理につき111Ⅰ、任意代理につき111Ⅱ・651Ⅰ、653)
・代理行為の瑕疵・けん欠(101)
・代理人の能力(102)
・復代理(104)…本人の代理人(107Ⅰ)


第99条  代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
第100条  代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
第101条  意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
第102条  代理人は、行為能力者であることを要しない。
第103条  権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
 保存行為
 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
第104条  委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又やむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
第105条  代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。
 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。
第106条  法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第1項の責任のみを負う。
第107条  復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
 復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
第108条  同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
第111条  代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
 本人の死亡
 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。


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2016年5月7日土曜日

6 無効・取消し

大阪府豊中市の司法書士の伊東弘嗣です。

さて、今日も続けていきましょう。

<無効・取消し>
・無効な法律行為
 意思無能力、公序良俗違反(90)、心裡留保で相手方悪意有過失(93)、通謀虚偽表示(94)、錯誤(95)
 効果…なんらの行為を要さずに当然に効果がない。 
・取消しうる法律行為
 制限行為能力、詐欺・強迫(96)
 効果…一応有効、取り消すことで遡及的に無効(121)、追認で確定的に有効(122)、取消権行使には時間的制限あり(126)
・無効行為の追認(119)
・制限行為能力者の行為の取消権者(120Ⅰ)…本人、代理人、承継人、同意をすることができる者
・詐欺・強迫行為の取消権者(120Ⅱ)…本人、代理人、承継人
・追認権者(122)…120条該当者、但し、成年被後見人は審判取消し後、未成年者・被保佐人・被補助人は同意がある場合か審判取消し後、詐欺・強迫を脱した後(124Ⅰ、Ⅲ)
・取消しおよび追認は相手方へ(123)→権利が第三者へ譲渡されていても相手方へ(大判昭6・6・22)
・取消し後は不当利得返還の問題(703、704)。但し、制限行為能力者は悪意であっても現存利益の返還(121但は703、704の特則)。所有権に基づく返還請求も可(時効のない点で有利)。
・法定追認(125)


第百十九条  無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
第百二十条  行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
第百二十一条  取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
第百二十二条  取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。
第百二十三条  取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によってする。
第百二十四条  追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。
 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。
 前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。
第百二十五条  前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
 全部又は一部の履行
 履行の請求
 更改
 担保の供与
 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
 強制執行
第百二十六条  取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。


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2016年5月2日月曜日

5 意思表示の瑕疵

大阪府豊中市の司法書士の伊東弘嗣です。

さて、引き続き今度は意思表示の瑕疵についてです。

<詐欺(96)>
・二重の故意が必要①相手方を欺いて錯誤に陥れようとする意思②その錯誤によって意思表示をさせようとする意思
・信義則上告知義務ある場合の沈黙も欺もう行為に該当する(大判大16・11・18)
・契約は有効、但し取り消しうる(96Ⅰ)
・第三者による詐欺…相手方悪意の場合取り消しうる(96Ⅱ)
・詐欺と錯誤の二重効
・詐欺取消し(96Ⅰ・Ⅱ)は善意の第三者に対抗できない(96Ⅲ)
・第三者とは新たな利害関係に入ったもの
・登記が無くても対抗できるかは争いあり。
・取消後の第三者とは対抗関係(大判昭17・9・30)
・取消権を行使せずに不法行為又は契約締結上の過失に基づく損害賠償請求可(大判昭5・1・26)

<96(強迫)>
・契約は有効、但し取り消しうる(96Ⅰ)。
・意思の自由を完全に喪失させるに至った場合は無効。
・第三者による強迫…相手方善意であっても取り消しうる(96Ⅱは「詐欺」のみ)。
・強迫取消しは善意の第三者にも対抗できる(96Ⅲは「詐欺」のみ)。
・取消後の第三者とは対抗関係(通説)。

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2016年4月29日金曜日

4 意思表示の欠缺

大阪の司法書士の伊東弘嗣です。

ようやく、意思表示の瑕疵(かし)・欠缺(けんけつ)の部分です。1000条以上ある民法の100条くらいですから、ようやく1割くらいですね(民法法人の条文が削除されていますので、そう考えるとまだ1割にも満たない。)。

<意思表示>
・動機→効果意思→表示意思→表示行為
・効果意思→表示意思→表示行為を意思表示という。
・意思主義と表示主義
 効果意思、表示意思を優先するか、表示行為を優先するか。
<心裡留保(93)>
・原則有効(表示主義)、相手方悪意有過失無効
・身分行為には適用なし(最判昭23・12・23)。←取引の安全を考える必要なし。
・代理人の権限濫用に93但類推適用(任意代理につき最判昭42・4・20、法人につき最判昭38・9・5、法定代理人につき最判平4・12・10)。
<虚偽表示(94)>
・原則無効(意思主義)、善意の第三者に対抗できない。
・権利外観(表見)法理…虚偽の外観、本人の帰責性、相手方の信頼
・当事者間では無効のまま←ex.善意の第三者が抵当権設定者の場合の所有権の所在につき実益あり。
・第三者が利害関係人となった時点に善意であれば、後に悪意となっても保護される(最判昭55・9・11)
・登記がなくても対抗できる(最判昭44・5・27)
・第三者…当事者又はその包括承継人以外の者であって、新たな独立の法律上の利害関係を有するに至った者(金銭の授受のない仮想貸金債権を譲り受けた第三者も消費貸借契約自体要物契約であり成立しているものではないが94Ⅱの趣旨から保護されるであろう(私見)。)
・悪意の転得者は絶対的構成で保護される(大判昭6・10・24)
・身分行為には適用なし。
・94Ⅱ類推適用
<錯誤(95)>
・効果意思と表示行為の不一致
・内容の錯誤(効果意思と表示意思の不一致)と表示行為の錯誤(表示意思と表示行為の不一致)
・原則無効(意思主義)、但し、①要素の錯誤(その錯誤がなければ通常人もそのような意思表示をしなかったであろうという重要な点での思い違い(大判大7・10・3))であること、②重過失(普通にすべき注意を著しく欠いている(大判大6・11・8))ないこと
・重過失ある場合であっても、相手方が悪意(大判大10・6・7)、相手方の詐欺(判例)による場合は無効
・無効の場合であっても表意者に過失あれば損害賠償請求される(契約締結上の過失又は民709を根拠)。
・表意者のみが無効主張しうる(相対的無効説)。もっとも、二重の錯誤の場合、表意者自身が錯誤を認めており、債権保全の必要性があれば、第三者の無効主張認める(最判昭45・3・26)。←債権者代位構成では保全の必要性さえあれば無効主張しうることになる。
・無効主張しうる範囲…一部無効も認められる(最判昭54・9・6)。
・善意の第三者は保護されない(大判昭17・9・30)
・動機の錯誤(動機と効果意思の不一致)…相手方に明示・黙示に表示されている場合、意思表示の内容となり、要素の錯誤であれば無効主張しうる(最判昭29・11・26)。
・身分行為には適用なし。但し、人違いの場合重過失あっても無効主張しうる。
・和解契約(695)の直接の目的となった法律行為について錯誤無効を主張できない(和解の確定効696)。和解の前提として争わなかった事実については争いあり(無効主張を
認める最判昭33.6.14、無効主張を認めない最判昭28・5・7)。

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2016年4月20日水曜日

契約の分類

大阪の司法書士の伊東弘嗣です。

これは基本のきですね。契約の各論の前にまた見直しましょう。

<契約の分類>
・諾成契約と要物契約
諾成契約…意思表示の合致のみ
要物契約…意思表示の合致に加え、物の引渡しが必要。(使用貸借、消費貸借、寄託、代物弁済、質権設定、手付)
・様式契約と不様式契約
様式契約…書面によるなど一定の方式を求められるもの。ex.保証(446Ⅰ)、定期借地
不様式契約…多くの契約
・双務契約と片務契約
双務契約…互いに対価的債務を負担
片務契約…ex.贈与、使用貸借
・有償契約と無償契約
有償契約…互いに対価的出えん(経済的損失)を負担。
無償契約…ex.贈与
・双務有償、片務無償が多いが、例えば、利息付消費貸借は片務有償。


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住所 大阪府豊中市千成町三丁目9番1号 村尾マンション1F
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2016年4月18日月曜日

3 公示による意思表示、意思表示の受領能力

大阪の司法書士の伊東弘嗣です。

今回もマニアックな感じです。
実務で取り扱ったことは今のところありません。

<公示による意思表示>
・相手方を知ることができない又は相手方の所在不明(98Ⅰ)
・公示送達の民事訴訟法の規定に従い、裁判所の掲示板に掲示し、少なくとも一回官報公告(98Ⅱ)。裁判所が相当と認める場合、官報公告に代え市区町村町役場これに準ずる施設の掲示に変えることができる(98Ⅱ但)。
最後に官報に掲載した日又は官報に代えた掲示を始めた日から2週間で相手方に到達したものとみなす(98Ⅲ)。表意者に過失ある場合は無効(98Ⅲ但)。

<意思表示の受領能力>
未成年者・成年被後見人は意思表示の受領能力なし(98の2本文)。
未成年者・成年被後見人の法定代理人が知ったときは、意思表示の到達を主張できる(98の2但)

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2016年4月15日金曜日

2 契約の成立(意思表示の到達)

大阪の司法書士の伊東弘嗣です。

さあ、どんどん行きましょう。

<契約の成立>
・申込と承諾の意思表示の合致により契約は成立する。
<隔地者に対する意思表示>
・隔地者に対する意思表示の効力発生時期…意思表示の到達時(97Ⅰ、到達主義)
・了知されていなくても支配圏内に置かれることで足りる(最判昭43・12・17)
・遺留分減殺請求につき、内容証明郵便が受取人不在のため留置期間満了し差出人に返送された場合にも到達を認めた事例あり(最判平10・6・11)
・発送後到達前なら撤回可能(撤回の意思表示が以前着の必要あり。)
・例外的に発信主義…隔地者間の契約の成立時期は承諾通知の発信時(に遡る)(526Ⅰ)、制限行為能力者の相手方の催告に対する確答(20Ⅰ)
・隔地者に対する意思表示発信後の死亡・行為能力喪失…効力を妨げない(97Ⅱ)
契約の申込につき①申込者が97Ⅱと反対の意思表示をした場合、②申込到達前に相手方が申込者の死亡又は行為能力喪失を知っていた場合、97Ⅱは適用されない。(525。なお、承諾については同様の規定なし。)
<契約申込の拘束力>
・隔地者間で承諾期間を定めた申込…その期間内は申込みを撤回できない(521Ⅰ)。もっとも、申込到達前(つまり申込の効力発生前)に撤回通知が届けば撤回の効力生じる。承諾期間経過後は申込は当然に効力を失う(521Ⅱ)。
・隔地者間で承諾期間の定めのない場合の申込…承諾を受けるのに相当な期間は撤回不可(524)。相当期間経過後、承諾の「発信」前に申込撤回の通知が到達しないと承諾により契約は成立する(526Ⅰ)。
<承諾のできる期間>
・承諾期間の定めあり…承諾期間内に承諾通知が「到達」しないと申込は効力を失う(521Ⅱ、期間内に到達すれば、承諾の意思表示の発信時に契約が成立する(526Ⅰ))。
・承諾期間の定めなし…申込の撤回ができる時(524)からさらに相当期間経過後に申込は効力を失う(多数説)。
・変更を加えた承諾…申込拒絶と新たな申込(528)
・遅延した承諾の効力…最初の申込は効力を失う(521Ⅱ)が、新たな申込とみなすことができる(523)。なお、その期間内に到達すべき時期に発送したものであることを知ることができるときは遅滞なく延着通知しなければならない(522Ⅰ)し、この通知を怠れば期間内到達とみなされる(522Ⅱ)。